まつばらの民話をたずねてへようこそ

松原で生まれ育った、昔から伝えられている民話をご紹介します

 

袋を引っ張る子狸

松原の民話第1話(2002年10月)

松原には、たくさんの狐や狸が住んでいて、狐や狸にだまされたお話が多く語られています。そのようなお話の中でおもしろいのは、松原の狐や狸のお話が、中高野街道を境に東側では狸の話、西側では狐の話となって語られています。このお話はそうした決まりを破って、西側で語られる数少ない狸のお話です。

さて、今は「ジャンボフード」というスーパーになっていますが、昔はここに売り声が威勢よく飛び交う市場がありました。布忍橋のまわりに住む人たちは、日常のものをここで買っていましたが、ある日のこと、東代に住む主婦がいつものように市場で買い物を済ませての帰り道、小学校の2・3年生ぐらいの男の子が買い物袋を何度も何度も引っ張るので見てみると、ここらあたりでは見たことのない目のくるりとした男の子が主婦を見上げていたそうです。

主婦は「ああ、これがうわさの狸だな」と思ったので、「なあ、ぼん、なんで人間のお菓子ばかり欲しがるんや。ええか、もうこんなことはやめや。その代わりにお菓子が欲しくなったら何時でもおいで、その時はいつでもやるよって狸の姿でおいで」、そない言って、お菓子を渡して返したのだそうです。

それから数日かして、子狸の姿でやってきました。「よく来たなぁ」、そない言ってお菓子を渡したそうです。それ以来、毎日やってきて仏様のお下がりのお菓子をいただいて帰るようになりました。

ところがある日のこと、この主婦が急に朝早くから大阪まで行く用事ができたので子狸のために仏様のお下がりの紙包みを庭まで持っていくことを忘れてしまいました。やがて、子狸がやってきましたがお菓子もなく、主婦もいません。ふと座敷を見ると仏様の前にいつもの紙包みのお菓子がありました。喜んで包みのお菓子を食べ始めた所へ、子狸がお菓子をもらっていることを知らない亭主がやってきて「この泥棒狸めがぁー」と言って棒を振り上げて入ってきました。びっくりした子狸は庭に飛び降り逃げ帰ろうとしましたが、そこにはたくさんの鉢植えの木が置いてあり逃げまどう子狸が次々とその鉢植えの木をこわしてしまいました。怒った亭主が子狸を「叩き殺したるぅー」と棒を振り下ろした瞬間に子狸はパッと消えてしまいました。驚いてあたりを見渡すと仏壇の中に新しい位牌が小さい位牌を抱えて並んでいました。見れば小さい位牌には泥がついています。亭主は狸が化けたとすぐわかりましたが、位牌なのでどうすることもできず、すごすごと自分の部屋へ戻ったそうです。

この事件があってから、松原では、狐が巫女の魂を借りて神様のお告げを降ろし、村人と神様が交流する『狐おろし』や『狐寄せ』の行事の時に、狸も仏様のお告げを告げるようになったそうです。狐が巫女の魂に降りたときは手を上へ上へとせり上がり、狸が降りたときは手を前へ前へ出してひれ伏すのだそうです。 

大阪府文化財愛護推進委員  加藤 孜子(あつこ)